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難しい採光条件ながら全フロアに光があふれる空間構成   陽光を存分に取り込む明るく開放的な地階を活用し快適な温熱環境をも実現したオール電化住宅―――「南千束の家」
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建築写真/中田 康博
建築家・磯部邦夫さんが設計した「南千束の家」の魅力は、何といっても地階とは思えないほど明るく開放的な大空間。「光や風、緑を取り込む中庭が欲しい」という施主の要望への回答として導き出されたこのスペースは、夏涼しく冬暖かいという快適性の面でも重要な意味をもっているとのこと。内観のスタイリッシュなデザインや経済性にも大きく貢献するオール電化設備のメリットも含めて磯部さんに伺いました。
地階と1階を吹き抜けでつなぐアイデア
東、南、西と3方を隣家に囲まれ、採光条件が必ずしもよいとはいえない敷地ながら、「南千束の家」は随分と明るく開放的な印象ですね。
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「東西からの日照確保ができず、南北を開放するために木造の一方向ラーメン構造を採用。東西は換気・採光用のジャロジー窓のみですが、南北、特に南側には大きな開口を設けています」(磯部さん)。

施主は30代のご夫婦で、娘さんが小学校にあがるのを機にマイホームを建てようと計画されたとのこと。以前住まわれていた商店街が少し賑やか過ぎたこともあり、プライバシーに配慮しながら光や風、緑などの自然環境を取り込んで娘さんがのびのびと過ごせるようにというお考えがあったようです。静かで明るく開放的な空間を強く望んでいらっしゃいました。

今回は建築家コンペを経ての依頼ということもあり、事前にかなり詳細なご要望を伺っていたとのことですが。

施主はご夫婦とも非常に具体的なイメージをお持ちでした。例えば、白を基調にしたシンプルでスタイリッシュなデザインにしたいとか、家族と向き合って料理ができるオープンキッチンや自然環境を取り込む中庭が欲しいなど。それに、必要な空間ボリュームを補完するための地下室や奥さまのための読書室など、多岐に渡ってご要望がありました。

今お話にあった「中庭」は見受けられないのですが、プランには取り入れられなかったのですか。
実際に敷地を見に行って、中庭を作ることが必ずしもよい結果に結びつかないと判断しました。北側を除く3方を隣家に囲まれていることや敷地面積から考えて、中庭に日が差し込むのは夏の短い間だけ、日射角度の低い他の季節には隣家や自らの影となってしまうのは明らかでした。そこで、もうひとつのご要望であった地下室を吹き抜けにして中庭のように活用するプランをご提案したのです。
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玄関を入ると吹き抜けによって視線が抜ける。また隣家からの目隠しを兼ねて竹を植えた奥のデッキへと一直線に見通せるため広々と感じられる。左は子ども部屋、右はガラス張りのバスルーム。

施主の反応はいかがでしたか。

要望したものがなかったわけですから最初は驚かれていましたが、すぐにこちらの意図を理解していただけました。建築家コンペとしては大胆な代案だったかもしれませんが、敷地の個性を読み解き、施主のご要望の本質をきちんと汲み取ったものとして評価していただけました。結果的にコンペで採用となったのですが、基本設計のほとんどの部分はこの段階で固まりました。

ゆるやかにつながる一体空間の魅力
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大型の開口部から日差しが入る開放的な空間は、地下であることを忘れてしまうほどのびやかで明るい。ご主人の寝室は普段引き戸を開け放しており、一体空間として横の広がりも感じられる。
では具体的に、空間構成について伺えますか。

ポイントはやはり吹き抜けでつながった地階と1階の一体空間です。南側にテラスを設けてスペースを作り、春分・秋分の日差しが効率よく地階に届く角度と距離をプランしています。地下室というと壁に囲まれた薄暗い部屋をイメージされることが多いでしょうが、ここでは真冬をのぞいて陽だまりができる快適空間になっています。

1階と吹き抜けによってゆるやかにつながっているというわけですね。

1階の娘さんの個室は吹き抜けに向かってガラスの引き戸を開け放つことができます。地階と1階はコミュニケーション可能な一体空間でありながら、それぞれのプライベートなスペースもきちんと切り分けることができる。あらかじめ機能を限定してしまわないことで、これから変化していくご家族のライフスタイルに合わせ臨機応変に使うことができるはずです。

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吹き抜けや南側デッキに対しガラス張りのバスルーム。夜にはデッキの竹をライトアップしながら湯船につかることも可能。ほかの部屋から見えても違和感がないようディテールにまでこだわる。

この地階がまさしく家族にとっての中庭になっていると。

屋外の中庭よりもむしろ多目的に使える自由なスペースとなりました。ご主人の蔵書や奥さまが集められた料理の本などが並ぶ読書室は、やわらかな光の中で思い思いに本を読んで楽しめます。また、向かい合う個室も引き戸を開け放つことで一体化して広く使えますから、2階のLDKとは印象の異なるもうひとつのリビングのようなイメージでとらえることもできるでしょう。実際に、夏場は涼しいので地階で食事されることもあるそうです。

快適性も十分ということですね。

実は1階・2階は木造ですが、地階はRC造というプラン。外断熱とし、このコンクリート躯体の熱容量を活かすということも「南千束の家」では重要なポイントでした。つまり地階の躯体に、夏は涼しさを蓄え、冬は床暖房による暖かさを蓄えておくわけです。特に冬場は輻射熱による全館暖房となりますから、一体空間のどこにいても暖かさを感じることができます。

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