
白崎泰弘:
施主は3人の娘さんをもつ30代のご夫婦。奥さまのお母さまが独り住まいしていた実家で同居することになり、リフォームを決められたとのことでした。三世代6人でのびのびと暮らすには、延床面積100m2ほどの既存の住宅はやや手狭。暗い、寒いと問題点はありましたが、計画時に築12〜3年とあまり老朽化はしておらず、建て直すのはもったいないというお考えもあったようです。
白崎治代:
単に「もったいない」というだけでなく、お母さまが建てた家に対する思いを大切にしたいともおっしゃっていました。その反面、ご夫婦はなるべく新築の気分も味わいたいとのことで(笑)。道路に面した東側への増築を中心に外観デザインや内部の空間構成をリニューアル。また既存部分も階段をつけ替えたり水回りを一新したりと大幅に改修しました。

「アウタールーム」によって、開放的な雰囲気にリニューアルされたリビング。テーブル形式のダイニングから、サイドボード、座卓のリビングと視線の高さをコントロールすることで、のびやかな空間を演出(撮影/畑亮)。
白崎泰弘:
玄関へのアプローチ部分の道路境界側にガルバリウム鋼板で壁を立て、半戸外的な通り土間をつくりました。「アウタールーム」と名づけたこのスペースは、リビングと道路とのいわば緩衝空間。人通りの多さを忘れさせ、静けさをもたらしてくれます。また、門扉を確実に施錠すれば、セキュリティ面にも配慮しながら、夏の暑い夜などに涼しい風を取り込むこともできます。
白崎治代:
外から見ると黒のガルバリウム鋼板ですが、中から見ると木調の壁。内部空間の延長として広々とした印象を与えるという面でもうまく働いています。以前は通行者の視線が気になってカーテンを閉めっ放しにしていたというリビングですが、現在は「アウタールーム」に向かって開放。プライバシーを守りつつ光を取り込むことが可能となって明るくなりました。

白崎泰弘:
3年ごとに変わる娘さんたちのライフステージに順応していくため、それぞれの個室をあらかじめ用意するのではなく、成長に合わせて自在に仕切ることのできる寝室と勉強コーナーを一室ずつ、というご提案にしました。13.5畳のワンルームの寝室には、入り口も照明も3つ設けてあります。また、収納は間仕切りに使うことができる可動式のクローゼットとしました。
白崎治代:
勉強コーナーには、並んだ娘さんたちが勉強を教え合う場面を想定して5メートルの長机をつくりつけました。勉強に集中するときにはロールブラインドを下ろしてブース化できるようにしてあり、3つのスペースにはそれぞれ照明・コンセント・LANを用意。こちらは、奥さまが家事をしながら勉強を教えたり三世代でくつろいだりと、家族のコミュニケーションスペースにもなっているようです。

白崎泰弘:
近くに家族がいる環境の方が、勉強がはかどるかもしれません(笑)。個室とは別に勉強コーナーのような「公室」を設けるアイデアは、子ども部屋は個室がよいか大部屋がよいかといった議論に対してのひとつの回答になるのではないかとも感じています。また、開放的な空間構成ということでつけ加えると、今回は快適な室内環境を実現するために重要な断熱性の面でも徹底した改修を施しています。
白崎治代:
当初は壁や天井の下地を残す計画だったのですが、木軸の欠損や構造の不整合が目立ったため、今回の構造計算に必要な柱・梁に関わる部分は全面的にはがして補強。その際に、劣化していた断熱材もすべて交換しました。加えて、1階の床下に断熱材が入っていないことも判明。施主が、1階の底冷えをどうにかしたいとおっしゃっていた理由がわかりました。
